HOME「闇の中を歩む民は大いなる光を見た」
イザヤ書８章２２節～９章６節
藤井清邦牧師
教会では、クリスマスを迎える準備の期間として、１２月２５日から遡って ４回前の日曜日から、待降節、アドベントと呼ばれる大切な時を過ごします。
主キリストの降誕を祝うクリスマスの礼拝へと向かう歩みの中で、わたしたち自身の姿を振り返り、またキリストの降誕の意味と恵みを新たに思い返しながら過ごすときです。また、この待降節の期間は、クリスマスに洗礼を受けられる方の準備の期間でもあります。
昨年１０月、ブリックホールで行われた「夜景サミット」で、長崎の夜景は、香港、モナコと共に、世界を代表する「三大夜景」に認定されました。そして今年は、長崎の新しい観光キャッチフレーズに、「光と祈りの街、幸福の街 長崎」との言葉が選ばれたそうです。
光は、ただわたしたちの周囲を照らすだけでなく、光に照らされた人たち、光を見る人たちに大きな安心感を与えます。現代に生きるわたしたちは、真っ暗闇の状態を経験することが、ほとんど無くなりました。朝になるまで、どこにも光を見出すことのできない状況におかれることは、まずありません。真夜中に起きてもスイッチ一つ、センサー一つで明かりがつく時代です。夜の闇ということを意識しなくても、不便を感じない時代です。わたしたちの生活を便利に照らしてくれる明かりは、満ちています。
しかしわたしたち人間を取り巻く「暗闇」は、一層その闇を深くしているようにも思います。
わたしたちの周りには、様々な闇があります。夜が訪れます。人生の様々な困難な出来事でしょうか。病との戦いの日々でしょうか。死というわたしたち人間誰もが必ず向き合わなければならない、そして必ずその時を迎える深い闇があります。一方で、人間の罪や欲望が支配する闇もあります。上に立つ者が、力や数で政治、社会、世界を支配する悪しき闇も存在しています。
今日、預言者イザヤは告げています。
「地を見渡せば、見よ、苦難と闇、暗黒と苦悩、暗闇と追放。今、苦悩の中にある人々には逃れるすべがない。」（イザヤ８・２２）このイザヤの告げる闇は、旧約の昔にひろがっていた闇であると同時に、現代にあってよりその暗さを増しているようにさえ思うのです。
しかし、イザヤはその闇の中を歩む民が、大いなる光を見、死の影の地に住む者の上に光が輝いたと宣言します。
クリスマスの出来事、それは、暗闇の中にある民が、大いなる光を見出す、恵みの時です。人間の最も深い闇、悲しみや絶望のどん底に差し込んでくる、大いなる光があると、聖書は告げました。
カール・ラーナーという神学者はこのように書いています。
「キリストは来られ、
彼は夜を光に変えられた。
彼はわたしたちの闇夜を、
わたしたちの理解できない夜を、
わたしたちの不安と絶望の
過酷な夜を、
きよめられた夜、
聖なる夜に変えてくださった。
それゆえに、夜の闇はもはやない。
夜は聖なる夜となったのだから」
救い主の誕生を告げる、イザヤ書の御言葉は、「闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。」と告げています。
暗闇の中を歩む民は、なぜ光を見たのでしょうか。どうして死の陰の地に住む者の上に光が輝いたのでしょうか。
預言者イザヤは、「ひとりのみどりごが わたしたちのために生まれ」、「ひとりの男の子が わたしたちに与えられた」からだと言うのです。一人のみどりご、イエス・キリストの誕生によって、暗闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に光が輝いたのです。
この天からの救いの光は、風が吹けば消えていくような頼りない光ではありません。わたしたちの闇がどんなに深くても、わたしたちがどこにも救いを見出すことができないような闇の中にいようとも、その闇を照らし、あなたを照らす輝かしい、力強い救いの光が差し込んだのです。それがクリスマスの出来事なのです。
2013年12月1日 主日礼拝
