礼拝説教

「一人の羊飼いに導かれる一つの群れ」

ヨハネによる福音書10章7~18節
藤井清邦牧師

IMG_9204.JPG  主キリストは、「良い羊飼いは、羊のために命を捨てる」と仰せになりました。その、良い羊飼いであるキリストは、御自分の命を与えて羊を救い「こうして羊は、一人の羊飼いに導かれ、一つの群れになる」と仰せになったのです。主は、失われた羊のために命を捨てて羊を贖い、救い出してくださり、羊を導いて「一つの群れ」として下さるのです。

 この「一つの群れ」とは、まことの羊飼いであるキリストに導かれる羊の群れたる「教会」のことだと理解されてきました。

 教会とは一体どのようなところなのでしょうか。それは、羊のために命を与えてくださるキリストによって、「一つ」に集められ、救われた者たちの集いです

 その教会の根底には、イエス・キリストが十字架に命を与えて下さったという、キリストの贖いがあるのです。キリストの十字架によってこそ、わたしたちは「一つ」に集められているのです。


 「一つ」という言葉は、ヨハネによる福音書に大変特徴的な神学的用語です。

 今日開かれているヨハネによる福音書10章では、教会は「一人の羊飼いに導かれる一つの群れ」であると語られています。また17章では、主イエス様がいよいよ十字架におかかりになる直前に祈られた「父よ彼らを一つにして下さい」との主イエスの祈りの言葉が記されています。

 このキリストの語られる「一つ」とは、わたしたちが仲良く一つに集まっているというような筋道の話ではありません。同じ思想を共有する者たちが集まって一つの群れを作るのでもありません。

 羊のために命を与えてくださるキリストにおいてのみ、わたしたちは「一つ」なのです。わたしたち失われた羊のために自らの命を捧げ尽くし、与え尽くしてくださったキリストの十字架によって、わたしたちは「一つ」に集められているのです。

 使徒パウロが教えているように、父と子と聖霊のみ名によって洗礼を受け、キリストの死と復活にあずかった者は、皆キリストにおいて「一つ」です。(ガラテヤ3・27-28参照)。キリストのからだである教会も「一つ」であり、頭であるお方もただ一人キリストだけです。

 み体である教会の中に生じる分裂は悲劇です。パウロは、分裂状態にあったコリントの教会の信者たちに向って「キリストはいくつにも分けられてしまったのですか。」(一コリント1・13a)と強く問いかけています。パウロにとって教会の分裂は、まさにキリストご自身を引き裂く程のことであったのです。

 教会の一致を損なうことは明らかにキリストの御心に背いています。

 わたしたちが目を向けるべきは、わたしたちのために命を捧げ尽くして下さった良き羊飼いである十字架のキリストです。そのキリストに向いあった時、キリストのみ救いに招かれたわたしたちの生き方、歩み方が示され、指差されていることに気づくのです。

2014年10月26日 礼拝説教抜粋