礼拝説教

藤井清邦牧師

「そこで、イエスは言われた。『神の国は何に似ているか。何にたとえようか。それは、からし種に似ている。人がこれを取って庭に蒔くと、成長して木になり、その技には空の鳥が巣を作る。』

　また言われた。『神の国を何にたとえようか。パン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。』」

　今日の福音書の箇所で、主イエス様は神の国について教えるために、「からし種」と「パン種」をお語りになりました。

　神の国が、からし種に似ているとはどういうことでしょうか。主イエス様は「人がこれを取って庭に蒔くと、成長して木になり、その技には空の鳥が巣を作る。」とお語りになりました。からし種は、ゴマ粒よりもずっと小さな種です。土の上に転がっていても、誰も気づいたり、注目したりはしないものです。しかし、その種は芽生え、育ち、空の鳥を宿すほどに大きくなるのです。

　神の国は、このからし種のように、人々の目から見れば、誰も気に留めようとしないものかもしれません。しかし、たとえ人々の目には小さく見えたとしても、神の国の種は、わたしたちの救いの完成の時へと向かって、大きく繁り、豊かに救いの御業を成し遂げていきます。

　このからし種のたとえに続いて、主イエス様は、神の国は、パン種のようなものだと仰せになりました。

　神の国がパン種のようだと譬えられているのは、それが混ぜられたなら、ただの粉であつたものが、発酵し、造り替えて、新たなパン種になっていく、そのような変化が起こるということを見つめています。少しのパン種であっても、それがまぜられたなら、全体を変化させてしまう力があるということを、聖書は教えているのです。

　神の国、神様のご支配が、わたしたちの中に始められたなら、それはわたしたち粉の力ではなく、パン種そのものの力によって、粉全体が造り替えていくのです。つまり、神の国のパン種を混ぜ込まれたわたしたちは、わたしたち自身の存在が、神の国の福音の力によって造り替えられていくのです。わたしたちの存在全体が、神の国の命にみなぎった存在として造り替えられていく、そのような恵みが語られているのです。

　使徒パウロは、テサロニケの信徒への手紙の中に「わたしたちを愛して、永遠の慰めと確かな希望とを恵みによって与えてくださる、わたしたちの父である神」と書き記しています。神様は、わたしたちに「永遠の慰めと確かな希望」とを与えて下さるお方なのです。

　神の国の種は、神様が天を開いて、わたしたちに与えてくださるものです。

　その神の国の救いの種・福音の種を、わたしたちの内に豊かに宿らせながら、キリストの力によって造り替えられ、いきいきと生かされる生涯を共に歩み続けましょう。

2016年5月29日 主日礼拝説教より抜粋