礼拝説教

「慰めはどこに」

使徒言行録３章６節
藤井清邦牧師

IMG_8080.JPG◇数々の苦難に囲まれた人生
ヨブという人をご存じでしょうか。幸いで、満ち足りた生涯を送っていたヨブを、突如数々の災いが襲います。ヨブの妻は、あまりの悲惨さに、ヨブに言います。「どこまでも無垢でいるのですか。神を呪って、死ぬ方がましでしょう」（ヨブ2：9）
ところが、ヨブは答えます。「お前まで愚かなことを言うのか。わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか。」（ヨブ2：10）そして聖書は、こう続けます。「このようになっても、彼は唇をもって罪を犯すことをしなかった。」と。

突如として災が襲いかかるような経験をすることがあります。今まで上手く行っていたことが何もかも失われたり、計画が閉ざされたり、苦しみに苦しみを重ねるように生きるという経験をすることがあります。それは物質的な経験だけではありません。ペトロの手紙Ⅰには、「草は枯れ、花はしぼむ」との御言葉があります。人間の一生を見つめさせる御言葉です。わたしたちの一生は、草が枯れ、花がしぼむように、いつか衰えて行き、地上の生涯を終わっていくものです。それは厳しい現実です。思うように行かない日常、衰え、病、人間関係、そうしたものの中で、わたしたちは嘆いたり、苦しんだりします。

しかし聖書は「草は枯れ、花はしぼむ」という現実を凝視しつつも、生きることなどつまらないとか、死んでもいいなどとは言わないのです。それは草は枯れ、花はしぼむけれども、主の御言葉は永遠に滅びないからです。罪びとであるわたしたちを、それでも見捨てることなく、罪から贖い出し、救い出して、ご自分の子として下さるという神様のあなたに対する大きな愛と慈しみが、決して絶えないからです。だから生きることを投げ出すべきではないのです。神が愛しておられるものを、つまらない、くだらない、望みも無いなどというべきではないのです。

◇キリストにある望み
わたしたちには、望みをかけるところがあります。それは主ご自身です。その望みが絶たれることはありません。同時に、わたしたちは望みの掛け間違えをしてはなりません。この世には、わたしたちを慰めるもの、支えるものが沢山あります。しかし、過ぎゆくこの世の助け、永遠ではない助けに、永遠に関わる自分の最後の望みをかけるべきではありません。わたしたちは唯、主イエス・キリストに望みをおいて生きるのです。

◇慰めとは何か？
みなさんにとっての慰めとは一体何でしょうか？
わたしたちにキリスト教の信仰について教える「ハイデルベルク信仰問答」の第一間には、「生きるにも死ぬにも、あなたのただ一つの慰めは何ですか。」という問いがあります。それに対する答えはこうです。
「答：わたしがわたし自身のものではなく、体も魂も、生きるにも死ぬにも、わたしの真実な救い主イエス・キリストのものであることです。
この方は御目分の尊い血をもってわたしのすべての罪を完全に償い、悪魔のあらゆる力からわたしを解放してくださいました。また、天にいますわたしの父の御旨でなければ髪の毛一本も落ちることができないほどに、わたしを守っていてくださいます。実に万事がわたしの救いのために働くのです。
そしてまた、御自身の聖霊によりわたしに永遠の命を保証し、今から後この方のために生きることを心から喜びまたそれにふさわしくなるように、整えてもくださるのです」。
わたしたちは今、一体どのような慰めを求めているでしょうか。ハイデルベルク信仰問答に教えられている慰めとは、生きるにしても死ぬにしても、わたしは主のものであり、主はご自分の血によって、わたしたちをすべての罪から完全に贖い、聖霊により永遠の命を保証してくださると恵みの出来事なのです。

◇確かな救い
わたしたちの慰めは、漠然としたものではありません。キリスト教の信仰もまた漠然としたものではありません。なぜなら、それは主の救いが漠然としていないからです。神様のあなたを救うという御意志が、確かで、揺るぎないものだからです。
それゆえに、わたしたちは明確に「われは信ず」という告白的信仰に生きることが出来るのです。「あぁうれしわが身も、主のものとなりけりーーーたたえでやあるべき御救いのかしこさ！」このような救い主を賛美して生きる生き方が出来るのです。

◇「金や銀は無い」
ペトロとヨハネが、午後３時の祈りの時に神殿に上って行ったときのこと。生まれながらに足の不自由な男の人が運ばれて来ました。神殿の境内に入る人々に施しを乞うためです。彼はペトロとヨハネが境内に入ろうとするのを見て、施しを乞うたのです。
この男が、何かもらえると思ってペトロとヨハネを見つめていると、ペトロはこう言いました。「わたしには金や銀はないが、持っているものをあげよう。ナザレの人イエス・キリストの名によって立ち上がり、歩きなさい。」（使徒3：6）金や銀とは、この世の助けのことです。ペトロは「金や銀はない」と言いました。しかしそれで良かったのです。教会の与える慰めとは金や銀の慰めではありません。この世が与えるような慰めとは全く異なるのです。ペトロは「ナザレの人イエス・キリストの名によって立ち上がり、歩きなさい。」と宣言しました。
わたしたちは、金や銀の慰めによって立ち上がるのではないのです。主イエス・キリストによっていま立ち上がることが出来るのです。
今、あなたにも立ちあがって頂きたいと切に願うのです。この世の助けではなく、イエス・キリストの救いの力により頼んで立ちあがってほしいと願うのです。そこにのみ、本当の救い、望み、永遠の命があるのですから！主は、あなたを救うことがお出来になるただ一人の御方なのですから。


2016年11月　月報説教より